tchikuba's blog

クリエイティブが輝ける組織をエンジニアリングする

書籍『「納品」をなくせばうまくいく』から見えてきたエンジニアのキャリアのこれから

結構時間が経ってしまいましたが、3ヶ月程前に 「ビール片手にプログラマーを一生の仕事にするために出来ることを考えてみませんか?」 というイベントに行ってきました。

兼ねてから直接お会いしてみたかったソニックガーデン倉貫義人さんの話を直接聞けるということで参加しようと思いました。

このイベントで紹介もされていた倉貫さんの著書 「納品」をなくせばうまくいく をちょうど読んでいたということもありました。

このイベントで本の感想をブログに書きますと倉貫さんに宣言しておきながら大分遅きに失した感があるのですが、、 この本を読んで見て感じたことを徒然に書き残しておきます。


sonicgarden book 1

エンジニアに求められるパラダイムシフト

納品のない受託開発ではビジネスにおいてソフトウェアを所有することから利用するという発想の転換が必要ですが、 エンジニアにも発想の転換が必要でそれはシステムを完成させることから持続発展させることにより重きを置くということ。

具体的には以下の様な思考の変化が必要でこれが分かりやすいです。

  • バグをなるべく出さないようにする → バグが出てもすぐ直せるようにする
  • サーバーは停止しないようにする → 停止してもすぐに復旧できるようにする
  • 機能追加をやりやすいように作っておく → 今どうしても必要なものだけに集中する(=YAGNI)

私としてはこれは経験的にその通りだという実感があります。 ただし一般に直感的には正しくないような気がしてしまうので一定の経験がないプログラマだと前者の方にウェイトを置いてしまいがちな気がします。

大事なことはビジネスドメインに近接する場所でエンジニアが仕様の決定から実装、運用まで一気通貫で対応しているか?という点です。 こういう立場で日々の開発を行っているエンジニアであればこのパラダイムシフトは非常に受け入れ易いと思います。

sonicgarden book 2

エンジニアが会社を選ぶ基準

「顧客と社員の両方を幸せにする仕組みが会社の本質」とは至言だと思いました。 倉貫さん曰く

そのために精神論を語って働かせるというのはナンセンスであり、 会社やビジネスできちんとお金が回り、評価される仕組みを作ることが経営だと思います

とのこと。裏を返せばエンジニアが現実に妥協せずこういう評価軸を持ってちゃんと会社を選別していく必要があるんでしょうね。

また会社に拡大志向があるか否かについても自分の考えを持っておく必要があります。 倉貫さん曰く

会社は大きくなくても良い。むしろ小さな会社の方が良い。

とあり、ソニックガーデンはそれほど拡大志向は持ち合わせていないと判断出来ます。 どちらが良いかは価値観の問題もあると思いますが、個人的にはこのソニックガーデンの方針に非常に共感した次第です。 この会社の方向性が自分の方向性とあまりに合わない場合はどこかで必ず歪みが出てきてしまうので注意した方が良さ気です。

そもそも倉貫さんのこのツイートのようにエンジニアがもっとビジネスセンスを持った方が良い(人が多い)ということかもしれないとも思いました。

求められるパーソナリティ

サッカーなどのチームスポーツと同じようにエンジニアにも優れた人格であることやチームの為に貢献できる性格であることが求められる、とありました。 そもそもエンジニアである以前に社会人や人として当たり前のことだとは思うのですが、 技術を追い求めるあまり個人主義に走りがちなエンジニアであるからこそ、常にチームの大事さを意識しておきたいところですね。

エンジニアは職人気質だから気難しいところがあっても仕方がないなどと私がエンジニアになりたてだった10年前は言われたものですが、 これからはそういうスタンスでは一流のエンジニアにはなれないと思います。

そして個人的には更にもう一歩進んだ考え方として「人間臭いエンジニア」を目指したいです。 人は感じて動くから「感動」というそうです。決して理屈で人が動くのではないと思います。 理屈が必要とされるエンジニアリングだからこそ、感情豊かに日々の開発ライフを送ることが必要だと思います。

sonicgarden book 3

よりスピーディーに進化していく人間としてのエンジニア

ケント・ベックリンダ・ライジング の印象的な言葉が最後に紹介されていました。 曰く

Embrace Change – 変化を抱擁せよ
Fearless Change – 変化を自然と捉えるようになった時、自ら変わることを恐れてはいけない
Social Change – 自らを変化できるようになったならば、自らの変化を周囲に広めていく

これはもはやエンジニアに限った話ではなく、より普遍的な、これからの時代に生きる人への重要な示唆に富んだ教訓ですね。 人がインターネットを得た結果、空間的な距離が問題にならなくなりより早いスピードで世の中が変化するようになっています。 裏を返せば、人の成長のスピードもより早くなる可能性があるということだと、私は前向きに捉えています。

紹介された言葉は、より早く人が成長していく為に必要なことそのものだと思いました。 そしてより深い次元では自らの変化を周囲に広めることで他の人が良い方向に変化する手助けをすることこそ、 人が更に成長する為に必要なたったひとつのことだと信じています!